『子どもがバスケを始めたら読む本』
発売記念スペシャル対
子どもにとってスポーツとは何なのか
三上 太
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鈴木良和
株式会社ERUTLUC代表

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保護者に学びを届ける本は

実は小中学生に対して影響力がある

三上 先ほど、いまは情報が多くてどれを信じたらいいのかわからないといったような話がありましたけど、僕はこの本についても絶対視はしてほしくありません。考えるきっかけとしてはすごくいい本だと思うんですけど、情報は今後もアップデートされるでしょうからね。

鈴木 賢者の方々としてもそういうメッセージだったと思います。これを一つの目線にしてほしいですし、ここに書かれているものと違う情報に出会うことにも価値があります。自分が信じているものと違うものに触れることによって、価値が初めてわかる場合もあると思います。ただ、いままではまとまった情報がありませんでした。そういう意味では、子どもに対して貢献できる知識や情報を得るそのとっかかりとして、うまくまとめられたんじゃないかと思います。

三上 ただ、僕にも子どもがいるのでわかるんですけど、親のマインドセットを変えるのは相当難しいと思います。メンタルトレーナーの小林宏繁先生の話じゃないですけど、いままで子どもを車に乗せて自分が運転していた人が助手席に回って子どもに運転させるのは、すごく大変でしょう。親としてはモヤモヤします(笑)。言いたいけど、言ってしまうと、自分が運転することになってしまいます。そこを変えるのは簡単じゃないですよね。自分で書いておきながら、日々葛藤しています(笑)。

鈴木 本を読んだからといって、その通りになるわけではありません。そこから実践、実行するところに難しさがあります。

三上 僕は何でもかんでも言いたくなるタイプなので(笑)、そこでぐっと飲み込むのが一番難しいところです。でも、そこをクリアできると、親にとっても新しい発見があるでしょうし、それで子どもたちがよりよい方向に向かってくれれば、「おっ、変わってきたぞ」と思えます。指導者向けのこういう本はこれまでにもいっぱいあったじゃないですか。ガミガミ怒っているだけではダメとか、勝利至上主義ではダメとか、そういうのはたくさんあったわけです。ただ、親にそれを伝える本はなかったと思うので、価値あるものになったんじゃないかなと思います。

鈴木 大人や大学生の選手には直接伝えられますし、選手はそこで自分で考えて受け取ることができます。でも、小中学生の場合、そこにはやはり親の影響力が常に介在します。いい指導者が何千人と生まれても、そこには何万人もの保護者がいるわけです。指導者がいくらいい影響を与えようとしても、保護者が理解していなければ、子どもにはなかなか伝わりません。ですから、保護者に学びを届ける本というのは、実は小中学生に対してものすごく影響力を持つのではないかと思います。

三上 この本にもある通り、ジョン・ウッデン(アメリカの大学バスケット界の名コーチ)が「子どもが出会う最初のコーチは親」と言っています。親の影響力はそれだけ大きいということですよね。それだけ責任があって、模範を示さなきゃいけないわけです。あいさつ一つをとってみても、「やれ」と言うだけではなく、自分からやらなければいけないんですよね。そういうことについても、この本をつくる中で改めて勉強できました。

鈴木 そういうことを楽しむ感覚も大事ですね。「自分はいい親でなければいけない」みたいに追い込むのではなく、無理せずに、自分を変えていってほしいと思います。栄養のことを勉強してちゃんと食事をさせるのがいい親だと思っていましたけど、そのあたりのことについて、木村典代先生は面白い話をしていました。

三上 鍋をつくったら、味をどんどん足していけばいいんだと言っていましたよね。そんなのでいいのかと思いましたけど、それくらいの感覚を持ちながら、でも、本質はおさえていました。どのパートに関しても本質の部分に触れていると思うので、それを親の生き方とか楽しみ方にエッセンスとして加えることができればいいなと感じました。

鈴木 それと、女の子に関する情報はありがたかったですよね。父親としては聞きにくい部分ですし、スポーツをそんなにやってこなかったおかあさんだとしたら、なおさらわからないところです。この本の中で三上さんが質問をぶつけたことで助けられたおとうさんは多いんじゃないでしょうか。

三上 おかあさんは女性としての育ち方については理解しているでしょう。ただ、スポーツをするという要素が加わったときにどういうふうに育てればいいのか、父親の僕はよくわかっていませんでした。僕には娘がいます。女子バスケの取材をすると女性ならではの話がちらほら出てくるんですけど、あまり深掘りできない部分でした。そのへんは岩松真理恵さんが女性アスリートの3主徴を教えてくれたり、ギアの部分ではアンダーアーマーがああいうことをやっているのかということがわかりました。

鈴木 まったく知らなかったですからね。

三上 男性はほとんど知らない話だと思うので、それを聞けたのもよかったです。

鈴木 実は、保護者向けの本をぜひつくってほしいと最初に言ってくれたのは星澤純一先生(金沢総合高校女子バスケット部元監督)なんです。一つ前の本を出したときに「今度は保護者に向けた本もつくってね」とメッセージをくれたことが、この本をつくるきっかけになりました。実際のところ、保護者に学びの機会をどのように提供すればいいか悩んでいる指導者は多いと思います。そういう意味では、指導者から保護者にこの本を勧めてもらうのがいいかもしれません。