『子どもがバスケを始めたら読む本』
発売記念スペシャル対
子どもにとってスポーツとは何なのか
三上 太
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鈴木良和
株式会社ERUTLUC代表

3

勝つことを目標にしながら、

それと同時に育てていく。

親はそれをサポートする立場を

とらなければいけない

鈴木 それぞれの章のおすすめポイントについて触れておきましょう。星川精豪さんに聞いた第1章のポイントは、怪我したときに休ませる勇気の重要性です。僕らの時代だと、怪我しても休まないことが美学というか、1日休んだら3日分の遅れをとるみたいな感じだったじゃないですか。オスグッドでも我慢しなければいけなかったんですけど、オスグッドは「骨折」なんです。僕もオスグッドをやって苦しみました。当時こういう情報を知っていたら、体のケアが違っていただろうと思います。

三上 オスグッドと成長痛は違うとも話していました。

鈴木 成長期ならではの話を聞けましたよね。背が伸びるためにはどうすればいいかという点についてはどの親も興味があるところですけど、そこに触れているのも第1章のポイントです。

三上 オスグッドにならないためにはストレッチをしようという話でした。それでも痛い子はマッサージでもいいんだよとのことでした。ストレッチじゃないと絶対にダメとは言わないところがいいですよね。

鈴木 次の第2章の岩松真理恵さんは、女性アスリートの3主徴や、「RICE」が「PRICE」とか「POLICE」になっているという話をしてくれました。

三上 僕は娘を持っているので、女性の体を知っておくことは親としてすごく大事だなと感じました。そういうことを知ったあとで、マラソン選手などが体脂肪を絞ってトレーニングしているのを見たときは、彼女たちは大変なんだなと思いました。見る目が変わった感じです。

鈴木 それと、接骨院と整形外科をどう使い分けるかという話も面白かったですね。スポーツの世界にこれだけいるのに、考えたことがありませんでした。

三上 セカンドオピニオンの話も興味深かったです。

鈴木 あれを聞いてから、僕も気をつけるようになりました。

三上 第3章の木村典代先生がしてくれた、コンビニを使ってもいいという話も面白かったですね。添加物が入っていても大丈夫なのかなどと、中途半端な知識で考えがちですけど、「それが入っていなかったらどうなるの?」と逆に聞き返されてしまいました(笑)。あとは体重の話ですよね。女の子は体脂肪率で言うことには抵抗があるけど、除脂肪体重であれば、それは増えるほうがいいので嫌がらないとのことでした。そういう視点の変え方が上手だなと思いました。

鈴木 シンプルな指標でしたね。夕飯の量やタイミングについては、朝食の量がバロメーターになるとのことでした。朝食をあまり食べられないんだったら、夕飯が遅すぎるとか、夜に食べすぎていることを疑います。あと、朝食を食べないのは栄養バランス的に絶対によくないという話でした。食べすぎか適量かを見極めるのは難しいですし、栄養を十分に摂取できているかどうかを判断するのも難しいじゃないですか。そのへんの視点を整理できたのはよかったと思います。

三上 そして、そこからギア系の話に入っていきました。

鈴木 第4章はバッシュについてでしたけど、アシックスがバッシュから始まったという歴史には驚きました。バスケットボールが最もいろいろな方向に動いて止まるから、バッシュづくりは難しい、でも、難しい靴で成功すれば、スポーツシューズ全般で成功すると思ったという話でした。バッシュづくりって難しいのかと、話の入り口で引き込まれました。それと、紐の通し方だけでこれだけ違うのかということも感じました。

三上 かかとのフィッティングについては、僕も最近バッシュを履くときに意識しています。あとは、最後のところでギュッと締めるようにしています。

鈴木 それをやっていない子が多いんです。教室に行くと紐がゆるゆるの子がいっぱいいるので、大事な情報でした。

三上 フィットとはどういうことなのかについて触れられたのはよかったですね。

鈴木 続く第5章はインナーについて。特に、女の子のインナーの情報は、父親がまったく気づけない世界です。

三上 このインタビューを終えてから、草バスケをやるときに下にインナーを着るようになりました。冬だから、まずは温かくなるように着ています。それと、ちょっと締めると動きやすくなることがわかりました。インナーには意味があるんですね。

鈴木 第6章は小林宏繁先生でした。

三上 元コーチなので、その視点からのエピソード、相手チームの監督のことをよく思わない子どもたちがいるといった意外な話も聞けました。

鈴木 心理学的な知見からの話で、ある現象に対して親はどういう言葉かけをすればいいのかといったストレートな章になっています。自分のことを振り返って結構グサグサ刺さるところがありましたけど(笑)、具体的なアドバイスとして受け取ることができました。小林先生には、うちのクラブの保護者向けのメンタルサポートをやってもらっているんですけど、やっぱり親は悩むんですよ。こんなことを言ってしまったけどよかったのかと悩んでいます。それを小林先生に話した親御さんは「相談してよかった」と言っています。スポーツをしている子どもを持つ親のリアルな部分が出きていると思います。

三上 第7章の中山佑介さんの話についても考えさせられました。

鈴木 日本と世界の話でしたけど、世界ではこんなことが起きているんだと知りました。

三上 本当にそうですね。アメリカではこうなっているんだと。AAU(Amateur Athletic Union=アマチュア運動連合)の存在なんて知りませんでした。2シーズン制でいろいろなスポーツをやって、その中からトップを目指しているのがアメリカのイメージだったんですけど、そうではなくなってきているんですね。レブロン・ジェームズ選手や亡くなったコービー・ブライアントさんが異を唱えるほどのことが起きていると知ってビックリしました。

鈴木 中山さんはNBAで仕事をしていました。世界トップのスポーツ環境に身を置いていた人です。アメリカでお子さんを育てて、いまは日本に戻ってきていますけど、興味深い話を聞かせてくれました。日本も、何も知らずに子どもたちのスポーツ環境をつくっていったら、アメリカのようになってしまう可能性があります。でも、アメリカが失敗している部分があらかじめわかったら、そこはまねしなければいいことになります。そういったことがわかる章ですよね。子どもにとってスポーツとは何なのか、スポーツ大国のアメリカですらこんな問題を抱えているのかと考えさせられました。

三上 スポーツの世界はピラミッド型になっているイメージが強かったんですけど、中山さんが教えてくれたLTAD(Long-Term Athlete Development=長期的な選手育成)のモデルによって、四角形が理想だと知りました。その四角形の中でもっと上に行って、アクティブ・フォー・ライフでスポーツを楽しむことが大事なんだと理解できました。

鈴木 日本ではみんなが日本代表を目指さないといけないようなコーチングだったりしますけど、そうではないというLTADの考え方は、聞けばわかりやすいと思います。一部はどんどんアスリートになっていくけど、スポーツを楽しむ道もあるわけです。

三上 三角形を上っていた子がアスリートの道から外れても、そのあとでちゃんと楽しめる受け皿のような場所が用意されていればいいのかなと改めて思いました。

鈴木 自分の子どもに日本代表になってほしい、プロになってほしいと思っている親御さんがいます。でも、そうではなく、子どもにスポーツを楽しんでほしい、仲間をつくってほしいといった具合に、いろいろなモチベーションでスポーツに関わる親御さんがいてもいいと思うんです。この本はバスケットの一流選手を育てるためのものではありません。でも、スポーツをやっている子どもを持つあらゆる親が手にする価値があると思います。最後の章では、僕が思いのたけをぶつけています。あちこちでいろいろ話をしているんですけど、これだけは伝えたいということを集約して語りました。

三上 自主性と主体性の違いなど、異なる言葉の意味について、鈴木さんが1on1で話してくれました。そこにも出てきますけど、勝利至上主義はダメとなったら、じゃあ、育成だね、負けてもいいよねといった感じに針が極端に振れてしまうじゃないですか。そうではなくて、真ん中を行くべきなんですよね。勝つことを目標にしながら、それと同時に育てていくコーチングが理想。親はそれをサポートする立場をとらなければいけません。育成だから負けても仕方ないと言ってしまったら、子どもは伸びません。勝つために努力を促し、ただし、負けても次があるという立場を親はとるべきでしょう。

鈴木 勝ちも負けも、成長の糧として活用できるんです。結局、目的は子どもの成長です。指導者は子どもに成長してほしいと考えています。それはもちろんなんですけど、保護者と指導者が協力し合って初めて、子どもの成長に大きく貢献できるんだと思います。指導者と保護者の思いがつながって子どもに寄り添うためには、親としては指導者を理解することが大事になると思います。この本を読んだ親御さんが我が子の指導者の考え方や理念を聞きたいと思ってくれたり、こういう考えでコーチングしているんだと気づいてくれたりすれば、子どもの所属チームにポジティブに関われるんじゃないでしょうか。この本が、そういう風に関われるきっかけになればいいなと思います。

三上 そのきっかけにきっとなると思います。全部読んでもらいたいところですけど、例えば、食事をどうすればいいかなとか、怪我したらどうすればいいかなとか、何か困ったときに、気になるページを開くという使い方でもいいと思います。

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